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私が皐月から離れようとすると背後から冷たい感じの女の声がした。
「邪魔よ。退いて」
んっ? この声は。
皐月がその女を睨み付けたのを見た後、ゆっくりと後ろに振り返る。そこには黒いトレーニングスーツを着こんだ黒髪の少女が立っていた。皐月は、小さな声でその女の名を呟く。
「琉歌【るか】……」
この琉歌という無愛想で、あまり仲良くもない少女を視界に映したのと同時に、彼女という人物を客観的に頭がとらえる。
琉歌は私たちの同級生で、異次元管理局の運営方針に異を唱えながらも管理局への入隊を志願しているという、まあ管理局から言わせれば厄介者。だと思う。
彼女は一般的に闇人【やみと】と呼ばれる種族で、基本的に闇人が第三区域に滞在することなんて稀なんだけど、彼女がここにいる経緯やどうやって闇人に成り得たのかについては謎に包まれている。
闇人とは、敵を内部から攻撃する魔術のようなものを使用するというのが特徴的で、魔獣との融合により成り得る種族。と、授業で習ったことがある……ような気がする。
獣人と同じく、自我を退化させながらの融合を主とする事からイメージは良くないのだけれど、とある理由から管理局は、それに対する規制などは持てず、実力さえ有ればどんな思想家でも、どんな種族でも受け入れる体制をとっている。
まあ、その理由ってのは私達のような一介の志願者には知り得ない極秘機密なんだろう。
単に私が政治に疎いからという可能性も捨てきれないのだけれど。
『獣人No.583起動開始します』
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