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ねえ母さん、この力は何のためにあるの?
私が指先から放った一閃を浴びた獣人は、重量感のある音を響かせながら大地に身をあずけた。すでに辺りには獣人達の身体が五つ六つ横たわっている。
半壊した建物たちは夜の暗がりに寂しそうな顔をならべ、この場所が都心部であることを否定するように静けさを漂わす。
まるで、自分達は無法地帯と化した区域だと言わんばかりにビルの一角がパラパラと音をたてながら身を崩した。
──生殺与奪。
残り三体に追い込まれた獣人達が一斉に牙を剥き襲いかかってきた。
刹那、私は体から溢れ出す光を膨張させるように獣人達を光の中へと呑みこんだ。
──ついさっきまでの威勢を無くした獣人たちが私に許しを乞う。
助けてください、見逃してください、命だけは……
あなたたちは、そうやって命乞いする人間たちを幾度あやめてきたの? それがあなたたちの正義だと思うならさ、教えてよ。無力な私がこの世に生まれてきた意味を。
──ねえ母さん。覚えてる?
手を繋いで散歩した日のこと。
ぐずる私をしかった日のこと。
私を生んだ日のこと……
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