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深く遠い、幼かった頃の記憶。これは夢? だよね。なんだか懐かしい匂いがするな。
「ばあ様、ばあ様ー」
科学的な未来像とは遠くかけ離れた草原に、木造型の一軒家がぽつりと佇んでいるのが見える。その家中に響き渡る程の声量で幼子(おさなご)が老婆を呼んでいる声がする。
私の声だ……両親が多忙だったこともあって、幼い頃の私は郊外の自然に囲まれた一軒家で、婆様と二人で暮らしてたんだっけ。
婆様は年輪を深く刻んだ顔を、溢す笑顔で更にくしゃくしゃにして「凛【りん】ちゃん、どうしたんじゃ?」と優しい声で曾孫をあやしている。
「んとね、凛ね、ばあ様の昔話ききたいの」
伝え終えると、小さく華奢な私は椅子に腰掛ける婆様の上に、ちょこんと身をあずけた。
「そうかい、そうかい。凛ちゃんは、昔話が好きじゃのう」
肩のあたりまで伸びた栗色の髪を指先で弄りながら、小さな私は「うん!」とまた大きな声量で答えた。
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