第一章†神隠しの地†

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 その後ロニクスの持っていた替えの服を信二に渡し、サイズは合わないけど着用させた。正直、目のやり場に困る。暫くして、私達が元来た道を下山しようとすると、ある木陰からガサリと音がした。  皆の視線がその音のほうに集まる。そこには、既に下山していると思っていた人物、大野の姿があった。冷や汗が私の背中を伝う。  うわっ。さっきの戦闘とか、見られちゃったねかな……ヤバいな。どうしよう。  思い付く言葉を出そうとするが、上手く出てこない。皐月も同様にそんな表情を浮かべている。そんな私達を見てロニクスは「殺ってやろうか?」という心無い言葉を溜め息と一緒に吐き出した。  すると皐月はロニクスを力強い目で睨み付けて「感情の無い機械人らしい発言ねっ」と語尾を強めた口調で言う。 「心外だなあ、機械人は感情が無いわけではないぞ? あくまでも少し安定しているだけだ」  その後もロニクスが、皐月に機械人の特性とやらを説明しているが、そんな中、七瀬を抱き抱えたままの大野は私達に何も言わずに背を向けてゆっくりと歩みを進めながら下山して行った。  いつの間にか炎星は完全に沈み、辺りは暗闇に包まれていた。その後、私達は終始無言で山を下りることとなった。 .
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