狐と吸血鬼と神主と刑事のご関係

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深夜の人通りの少なかった筈の道。既に十数人の人が集まって来ている。 「あっちゃぁ~。大騒動になっちゃった。取り敢えず、私の対面を保つ為に、渡部を銃刀法違反で逮捕しといた方が良いのかな?」 何時の間にか現れた春川さん。仕事を丸投げした癖にそんなお馬鹿な発言をする。 「ふざけないで下さい。エル、すいませんがもう一仕事お願いします」 「はぁ~。過重労働だぞ。眼鏡へ報酬に三穂の口付けを要求する!」 私のファーストキスでは報酬が高過ぎるだと主張する! 「本人の許可が出たならば幾らでも貰って下さい」 先生、真顔で私を売らないで下さいよぉ。 「あー、お集まりの皆さん!私は警察だ。少し重要な話がある。私に注目してくれ。……そう、良い子達だ。私の眼をじっくり見ろ。そう、今夜は良い夜だ。何にも無い平和な夜だ」 私の許可も聞かずにご機嫌になったエルは、野次馬達の注目を己の眼に集め、その力を思う存分行使するエル。野次馬達の眼がトロンと生気を失っていく様子は少し恐い。エル曰く、私には絶対に使わないとの事だけど、たまにエルの赤く妖艶に輝く瞳を恐がる私がいる。あの野次馬同様に、私も知らずに記憶を改竄されて居るのでは無いかと? 後、私の先生の為に取ってあるファーストキスは絶対にエルにはあげません。 「それで、僕に何か言いたい事はませんか?」 先生の手が私の肩に触れている。心臓が高鳴る。いつもとは別の意味で。 「エッと、さっきの妖怪は何だったんですか?」 これは先生の求める答えで無いことは分かっていますよ。でも、私の心の準備が出来て居ないのです。 「あれは正確には妖怪ではありません。式神の一種、飯綱(イヅナ)です。昔、未熟な修験者が呼び出したものの、扱えず返す事も出来ず、暴れた話があります。今回も素人が面白半分呼び出してしまったのでしょうね」 いつもは朗らかに説明してくれる先生。今は淡々と語ってくれました。
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