狐と吸血鬼はこうして出会う

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「火遊びを屋内でやってはいけないぞ。さぁ、食事の時間だ。おいで」 おいで?この人に呼ばれた? 行かなければいけない。私の足が一歩一歩動き出す。 「よし、良い子だ。ほら、ご褒美をやるからこっちに来るんだ」 私、良い子?この人に誉められた? 凄く嬉しい。早くご褒美が欲しい。早くこの人の元に行きたい。 綺麗な身体。綺麗な髪。綺麗な顔。綺麗な瞳。この人の全てが愛おしい。 後、五歩、後、四歩、もうすぐ私を笑顔で待ってくれているこの人に。 その時、私の捉えられた心は、部屋中に鳴り響く手を叩く音に解放された。 「三穂!離れなさい!」 私の本当に愛おしい人の声。慌てて後ろに飛ぶ退く私。そこに駆けて来た先生。 「チッ!招かれざる客人、食事の邪魔をするとは失礼じゃないのか?」 不機嫌そうに舌打ちをした女性。慌てて、先生の後ろに下がった私に背徳感が残る。私、何やってたんだろう。私には先生って言う人が居ながら、こんな危ない女に惹かれるなんて。もう少しで、先生に見られたく無い場面に突入するところだった。 「食事は結構ですが、勝手に僕の家族を食べられては困るものでして」 そうです。私を食べて良いのは先生だけなのです。あんたみたいな女に食べられるなんて絶対御免よ。失態だ。とても恥ずかしくて先生の顔を直視出来ません。 「なぁ、眼鏡の男。私は今、機嫌がとても良い。そこの娘かそこの戻って来てくれた女。どちらかを私にくれたら、お前は見逃してやる」 一人で扉の側に避難している春川さん。狡い。私だって、この女が怖いのに。私は春川さんを差し出すことを推奨します。 「彼女達は僕の大切な人達です。免罪符のように使う気はありませんよ」 大切な人。先生にとってどちらが、より大切な人なのか凄く気になります。 「それよりも、この建物に入って消えた人々はどうしましたか?吸血鬼……さん?」 先生の質問に苦笑いを浮かべる女性。 「なかなかの博識ぶりだ。だが、その呼び方は少々好きで無い。私は、血は吸わんからな。ヴァンパイアと呼んでくれ。それか、エリレシア、エルで良い。主の許可なく入ってきたあの不法侵入者達なら地下で永眠している」 名前を名乗るのと同じくらい、気軽に。この女性にとって地下で永眠した犠牲者達の命は所詮その程度と言うことなのだろう。
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