狐と吸血鬼はこうして出会う

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眉を僅かに吊り上げる先生。 「あまり関心出来る応対ではありませんね。第一、貴女も不法侵入、不法滞在ではありませんか、エルさん?」 「誰も使っていない建物を管理してやってるのだ。別に良いだろ?ところで、私は御馳走を目の前にお預けを喰らって、少々気が競っている。オードブルはいらない。メインディッシュを置いて、とっとと失せろ」 ヴァンパイアの爪がその姿とは不似合いに異様に伸びる。その明らかな敵意を浴びて虚空に手を翳す前菜扱いされた先生。 「申し訳無いですが、今日の主菜は僕です。そして、これが貴女の最後の晩餐会です。三穂、下がりなさい」 先生の手に何処からか現れる、伝説の名剣、天叢雲剣。それを見れば、先生が本気で、僅かに驚くも直ぐにニヒルな笑顔になった彼女が、私では手に負えない相手であると分かる。 「私はあまり喧嘩沙汰は好きでは無いのだがな、売られた喧嘩は買うことにしている」 「奇遇ですね、僕も貴女と同じく血生臭い事は好きではありません。でも、喧嘩を売られたのはそちらですよ」 私が春川さんの元にたどり着くまでに飛び交う言葉の応酬。 二人共、私が危なく無いように待っててくれたようだ。その証拠に、私が春川さんの横に収まる時が、開戦の合図代わりとなった。
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