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「僕は自殺の手伝いをする気はありませんよ」
「フフフ、私が自殺か。笑えるな。それで構わない殺ってくれ。私は人間じゃない殺人罪には問われんぞ」
自分を嘲笑う彼女。
「それでも、僕は無闇に命を奪いたくは無いのですが」
そう、優しい先生には酷すぎる頼み。
「フン、優男だな。では、頼む殺してくれ。私には、行く場所も居る場所も無いんだ。こんな化け物がこの人間界に生きていく場所など……、そうだろ、そこの小娘」
いきなり声を掛けられ私の肩が弾む。私が人間では無いことに気付いていたらしい。
「三穂とか言ったか?この世の中には既に異質を拒む人間の世界しかない。ここに私たち化け物が住むには息苦しいと思わないか?」
確かに、私は人間じゃない。でも、私は人間の世界に先生を通して繋がり溶け込んでいる。化け物呼ばわりは心外だ。
私には大切な場所がある。
だから、そんな屁理屈は認めたくない。私は無言で彼女に近寄り、彼女の手を壁に止めている釘を抜く。
「おい、何をしている」
「貴女を先生に殺させたりしません。少し黙って下さい」
少し強めの口調で、次の釘を抜く。
「私はこの世界に必要無い存在なんだ。頼むから、殺して……」
少し頭に血が昇ってきたから、思いっきり睨んでやると眼を見開いて黙りました。そんなに私の顔が怖かったのかな。先生に見られちゃったかもしれない。最後の釘を力一杯抜きます。
力無く地面にへたり込むヴァンパイア。
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