狐と吸血鬼と神主と刑事のご関係

6/18
前へ
/125ページ
次へ
「いやはや、また厄介な仕事が私に回って来てね。最近、ここら辺りで起きてる切り裂き通り魔事件知ってるよね?あれのお鉢が遂に回って来たんだよ」 待ってましたとばかり話し出す春川さん。彼女は、一応殺人科の刑事さんである。であるのだが、警察では解決出来ないある事件を先生の手を借りて解決して以来、彼女には同様の厄介と位置付けられる事件を優先的に回されるようになったそうだ。 因みに彼女の勤める流柳署では、先生は彼女の協力者として有名であり、只の幼馴染みの彼女とただならぬ仲であるという先生に大変不名誉な流言が流れている。 断じて、先生とこの女は只の幼馴染みの関係なのだ。そう、私は先生を信じている。 「勿論知っていますよ。先週の火曜日の深夜。塾帰りの中学生が切られた事件でしょう?それを皮切りに中年男性や女の子が切られている」 先生がコーヒーを啜りながら平然と語る。 「ジャック・ザ・リッパーの真似事をするイカレ野郎か、もしくは、眼鏡の出番かも知れんな?」 今まで黙ってコーヒーをたしなんでいたエルが口を挟み出す。エル、先生を眼鏡と呼ぶんじゃありませんと、私は何度言ったかな? 「上はエルちゃんの推察と同じく、私と渡辺の出番だと判断したみたいだよ。昨日、夜遅くに夜更かしな女子大生がまた切られたんだけど、この事件の被害者唯一の生存者になったよ。その子が、腕と足をバッサリいかれてるのに見て無いんだって、犯人。という訳で、私たちにこの件が回って来たって事」 非常に厚かましく自分と先生をワンセットのように言う春川さん。この人は、先生が断らない事を知っているからここまで付け上がるんだ。 「分かりました。取り敢えず現場に行きましょう」 断るという事を知らない先生は春川さんの目論見通りに腰をあげる。私も、不承不承立ち上がる。
/125ページ

最初のコメントを投稿しよう!

42人が本棚に入れています
本棚に追加