狐と狸の仁義在る戦い

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「ねぇ、エルちゃん?」 そんな悲しい想いを酒と共に飲み干した春川は視線を私に戻す。 「エルちゃんは、自分の昔の事を私達に何も話して無いよね?」 いつか誰かに聞かれるだろうと思っていた恐怖。三穂の口から聞かれなかっただけマシだが、目の前の女性に動揺は隠せない。 「私は別に聞かないよ?」 その私の心中を流れる冷や汗を読み取ってか笑う春川。 つまり、眼鏡の過去に踏み込むには己の過去をさらけ出す覚悟をしろと言っているのか。 「お互い、過去なんか捨てちゃって、自由に振る舞えたら良いね?」 それだけを言うと立ち上がり輪に戻り、『さぁー、春川さんの復活だぁ。皆朝まで飲むぞー!』といつもの春川を演じる女性。 本当にそう思う。 明日からまた三穂と一緒に居れる時間が増える。しかし、私は何時まで三穂と居れるのだろうか?私にはただ三穂と一緒に居る自由は与えられて居ないのだろう。 私の手のひらに落ちて来る桜の花びら。私には、それが赤く染まった汚い物に見える。三穂の眼にはこの散りゆく花びらはどの様に映っているのだろうか?
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