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「それで、良いのか?眼鏡の言い付けを破っても?私は別にあの眼鏡の命令なんざ聞く気はさらさら無いが」
「これは、エルと私の秘密のデートだよ。だから、先生にはね?」
「まぁ、三穂がそういうのならば、そういう事にしておこうか。しかし、秘密のデート。実に背徳的で良い響きだ!」
我ながらエルを扱うのに、慣れてきたものだ。
「それにしても、先程から暗がりばかり三穂は選んで進んでいるな。これはつまり、私がその気になってしまう様に誘って……」
エルの赤い瞳が一段と輝いて見える。最後までは言わせない。
「本当にそう思ってる?」
睨み付けながら言うとエルから溜め息が漏れる。ちょっとぐらい良いじゃないかと、ぶつぶつぼやいているが無視する。
こんな街灯の少ない道を選んでいるのは、この吸血鬼女を欲情させるためじゃない。切り裂き魔と出会う為。エルだって、私のその目的を悟れないほど愚かではない筈だ。
先生の役に立ちたい。私だって、それは先生より強くは無いけど、それなりには腕に覚えがある。でも、連れてって欲しかった。だから、先生に怒られるかもしれない恐怖と戦いながら、夜道を歩いている。もし、今、先生に出会うと思うと、切り裂き魔なんて微塵も怖くはない。
やっぱり、怒られるかなぁ?でも、私だって先生に怒ってるんですよ。
「それで、相手の目星ぐらいは付いているのだろうな?」
普段は脳内桃色一色、怠惰な生活を好むエルは、なんだかんだと文句を言いつつも真面目な顔をするときもある。私はそんな緩みきっていない顔の方が好きなんだけどな。絶対に口には出さない。エルが図に乗るから。
「ずばり、切り裂き魔の正体は鎌鼬!」
……だと思う。
「三穂は本当に可愛いなぁ、自信の無さが顔に現れてるぞ?」
先生みたいなポーカーフェイスって難しいね。ええ、どうせ自信は無いですよ。
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