狐と吸血鬼はこうして出会う

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狐と吸血鬼はこうして出会う

エルとの唇懸けの鬼ごっこを制した私が、やっと床に付けたのは時計が三時を回ろうとしていた。 大分身体は疲れている筈、でも寝れない。飯綱との死闘の後に、エルと全力で追いかけっこしたのだ。それがいけなかったのかもしれない。私は今、ランナーズハイって奴なのかな?眼が異様に覚めている。 三十分ぐらい経ったのだろうか?草木も眠る丑三つ時。この世の者で無い存在が蠢くと言われる時間帯。 障子がスススっと静かに開く。何故か慌てて眼を閉じ、狸寝入りをする私。あれ、私がやったら狐寝入りなのかな? 足音を殺しているけど、はっきりと私の部屋に入って来た存在を感じる。その存在が先生ならば嬉し恥ずかしだけれど、先生は絶対に夜這いなんて行為はしない。深夜に私の部屋に侵入してくるのは、彼女しか有り得ない。 私の布団が持ち上がる感覚。何か暖かい物が入って来る。 いきなり起き上がって追い出す!と行きたい所だけど、今日の私には負い目がある。 私に付き合わせた所為でエルは大怪我をした。吸血鬼の異常な回復力で傷は直ぐに消えたけど、痛くなかった訳では無いだろう。流石に口付けは差し上げられないけど、お詫びに今日だけはこの行為を黙認してあげることにしよう。 でも、眼を瞑っていても感じるエルの熱い視線が恥ずかしさを誘因する。私の我慢が利く内に早く寝なさい。 「クッ、駄目だぞ。私。寝ている乙女の唇を奪うなど、しかし、なんて、なんて強い誘惑なんだ」 小声で自問自答をするエル。やっぱり、今すぐ追い出そう。 と言っても、そうする必要は無い。 エルは頭を布団の中へ入れる。私の横で丸まるだけ。エルは言と違って、動はある程度は紳士的なのだ。彼女の悪行は夜中に私の布団に入り込むだけ。 手を回す事もせず、私の横で背中を丸めて眠る。その体制、寝辛く無いのだろうかと思ってしまう。 先生に昔教わった事だけど、猫や犬などの動物が丸まって寝るときは不安がある時だそうだ。寒い所だったり、一人で寂しい時だったり。それは人も当てはまる事もあるらしい。不安を感じた時に体育座りをすると落ち着いたりする。 この先生に教わった豆知識は、吸血鬼にも当てはまるのだろうか?
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