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『光一!何か気になっているのか?気を使っているなら気にせず言ってくれ!』
『……』
『光一!!』
『き、気になるんだよ。刈屋君と千波ちゃんが!もしかしたら二人でラブフローズンを飲んで、その後キスをしちゃうんじゃないかって!!』
『なっ。そ、そういうことか。だがこの前……』
鷹志が言葉に困っている横で奈美も橋本も驚いたように光一を見ている。その時、ググッと更にぬりかべの力が強くなったのをみんなは感じた。正確には四人の力が抜けたから押されたのだ。50センチは体がずれた。その勢いでみんなが倒れそうになる。鷹志は焦ったようにみんなに言う。
『みんな!力を抜くな!ぬりかべに突破されるぞ!!』
その掛け声で何とか持ち直した。
鷹志は力を手に入れながら、もう一度光一を見て言う。
『光一の気持ちは分かった!いいぞ!行っていいぞ!学食に!』
『えっ?本当!?』
鷹志の思わぬ言葉に驚き顔をほころばせる光一。鷹志は但し書きをする。
『ただしだ!10秒待ってくれ!10秒間だけ俺抜きで三人でぬりかべをおさえてくれ!いいな?奈美も橋本さんも』
鷹志は光一と他の2人が頷いたのを確認し手を離し2メートルほど後ろに下がった。
手に重圧が加わりジリジリと後ろに下がる更に後ろで、バリバリバリっという勢いのある音が聞こえた。その3~4秒後。ぬりかべを押していた3人は、手にかかる重圧が軽くなったのを感じる。
真ん中には鷹志の姿が。
『いいぞ!光一!!行って来い!!』
横を見る光一の目に、鷹志の顔が風呂上がりの時のようなスポーツ時のような真っ赤に染まった表情が見えた。
しかし今の光一にはすぐにでも学食に行かねばならない理由がある。気にしている場合ではない。鷹志に一言付けて後ろに走り出した。
『分かった鷹志!ありがとう!行ってくるよ!!』
後ろに向かっていく足音がどんどん遠ざかっていくのを3人は耳に感じていた。
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