57人が本棚に入れています
本棚に追加
わなわなと体を震わせていた向だったが、突如として、むきーっ! とよく分からない奇声を発し、両手を突き上げた。
彼女がこんな状態になったのには、もちろん理由が―――と言うより、元凶がいる。
手を突き上げたまま、頭上でブンブンと滅茶苦茶に槍を振り回す向は、元凶なるその人物を思い浮かべて、ヒステリックに叫ぶ。
「あンの……馬鹿チビ石頭ぁぁあああああッ!!」
バッサァッ! と大音響に驚いたカラスやら鳩やらが、いっせいに木々の中から飛び出してきた。
彼女の上空で旋回する鳥達は、
『な、何だー!? 敵襲か? 爆撃なのかーっ!?』『うおおおっ! びびったぜちくしょおーっ!』『やかましいわボケェ!!』
と威嚇の声で鳴きまくるが、向の一睨みで再びどこかへ飛んでいってしまった。
それを見届けて、向は『はぁぁー……』と肩を落として、そのまま座り込んでしまう。
彼女の友人に、一人の少年がいる。小柄な体格で、女性である向の身長と大差がなく、またそれをコンプレックスとしている少年だ。
今日、その少年と喧嘩をした。
今までも、つまらない言い合いなんかは何度かした事もあったが、今回は『言い合い』ではなく『喧嘩』だ。
切っ掛けは……確か些細な事だった筈だ、とイライラした頭で今日の出来事を思い返す向は、そこで思考を打ち切った。思い出すだけでも腹立たしい。
最初のコメントを投稿しよう!