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「お帰り、嗣生」
扉を開けたのは赤毛の男だった。
気のせいか、一瞬こっちを見たような。
まさか、な。
ドアから俺の立っている植え込みまで50メートル近く離れてる上に、完璧に葉陰に隠れてる。絶対に俺の姿は見えない筈だ。
双眼鏡でも覗かない限り無理。
そう。俺は、双眼鏡を持っている。
実は先生の鞄に隠しマイクも取り付けてある。会話もばっちり、丸聞こえだ。
これはもう、立派なストーカーだよな。
「寂しかったよ」
男は櫟に抱き付いた。
再度、ちらりと視線を此方に寄越した。
明らかに、わざとだ。
俺が見えてるのか?
こんなに離れた暗がりで完璧に隠れてるのに?
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