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「ブランカ、どうしたの?」
笑いながら櫟が家に入っていく。
「シロだよ。ツグオ」
ドアが閉まった。
取り残された俺は、口内に血の味を感じて我に返った。
気付かない内に、悔しくて唇を噛んでいたらしい。
直ぐには動けなくて、閉まったドアを呆然と見つめていた。
あの扉の向こうに櫟先生は居る。
彼奴と二人きり。
暫くしてドアが開いた。
途端、背後に気配を感じた。
振り向くと奴が立っていた。
僅か二秒余りの間に、男は俺の背後に移動した事になる。
いきなりイヤホンを毟り取られた。
そして男は素早く二つとも地面に投げ捨て、踏み潰してしまった。
「覗きかい?いい趣味だね」
警戒して身体を固くした俺の耳に、嗄れた声で囁きかけた。
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