マンガみたいな恋をした

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 こんなに悪い恋ばかりしてきたあたしに神様は微笑んでくれたわけで、願望が叶ってしまったわけで、幸せになれそうなわけで。 「はい、今日は転校生を紹介するぞ。入れ~。」 「自己紹介をしてもらう。香川、いいよ。」 「香川凌哉(カガワリョウヤ)です。前の学校では野球部でピッチャーをしてました。よろしくお願いします。」 パチパチパチ  転校生が来てしまった。今までマンガみたいな恋はありえないと思ってたのに、神様はチャンスをくれた――。 「え~っと席は右端と左端の一番奥が空いとるが、どっちがいい?」 「…どっちでも……。」 「ん~、困ったなあ……。」 えっ、もし左端に来たら……あたしの隣になるっ。あたしの隣…//。あ、でもこれは神様からのチャンスであって、隣に―― 「香川くんっ、こっち来んさいっ。」 「えっ。」 木村絵里子(キムラエリコ)だ。3組にイケメンで人気者の彼氏がいるくせに。香川くんにまで手ぇ出してから。絶対いやだ。絵里子に取られるくらいなら、頑張って隣に来させようかな…―。 「よっし、木村はうるさいから、森沢の隣な。ほれ、香川、左端に机と椅子もってけ。」 「はい。」 ……香川くんと…隣になったあぁぁぁぁぁあ。これって、話しかけるべき?いや、でもマンガだったらあっちから「よろしく。」みたいな。あ、これは現実だから自分から話しかけんと変われない…… 「森沢さん、」 話しかけられた~~//。これ現実よね?で、よろしくみたいなん言われちゃう///。 「ん?」 「あの~、落ちたよ。」 んん? 「ありがとう。」 「フッ」 っあ。ワタシハ死んだ。こんな、第1印象が大事なときに、最近あたしらの中で人気の"ウンチ消しゴム"を落としてしまった。絶対 笑われたよね。あれは笑ってた。この人と恋は…もう出来そうにない――
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