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これ、夢? そこはとてもリアルに映った、見覚え有る場所だった。 もう少し歩くと、ほら ‥‥‥彼女のマンションだ。 何だか暑い‥ そりゃそうだ。 みんな半袖姿で、ツクツクホウシが鳴いてるから晩夏 ‥いや、初秋だ。 僕の手には、 彼女の部屋の合鍵と 進路調査のプリントと 専門学校のパンフレット。 これから起こるコトも知らないで 暑さと、走った熱で汗びっしょりで 嬉しそうに頬を紅潮させて息弾ませた‥ あのときの僕、そのものだった。 ‐止めろ! 行くなよ! 今、行っちゃダメだ!‐ ‐僕‐は、夢の中の僕を叫んで止めようとした なのに! コイツは、夢の中の僕は! あの頃の習慣通りに、部屋のベルも鳴らさず オートロックの自動ドアを開けて、エレベーターの前まで進んでいた―  
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