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「合唱部は、毎日放課後、第二音楽室で練習をしています。皆さん、是非見学に来て下さい」 舞台上の彼女が、演奏終了後に言った言葉が、俺の頭の中をグルグルと巡っていた。 音楽の授業で、第一音楽室には行ったことがあるが、第二音楽室の存在すら知らなかった。無論、場所がどこかさえわからない。 ステージの上には、すでに合唱部の姿はなく、空手の演武のようなパフォーマンスが行われていた。 呆然とその様子を眺めている俺に、加藤がしきりに声をかけているが、俺の耳にはちっとも届いていなかった。 俺の中に響いているのは、今しがた聞いたばかりの、とても合唱とは思えない彼女の歌声と、練習場所を告げる、マイクを通した彼女の声だけだ。
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