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とにかく、彼女と過ごした一年は、俺にとって特別で。 彼女が父親のレッスンをやめてしまった後も、少しでも彼女に近付きたくて、彼女と同じ環境でいたくて、父親からレッスンを受けていた。 なあ、アンタは、父親に言われたことをすべて忘れてしまったのか? 合唱の真髄を見失ってしまったのか? あんな合唱を人前にさらして恥ずかしくないのか? …そして、俺と歌った日々のことも忘れてしまったのか…? 二人で一つの楽譜を顔を寄せ合いながら見たことも、俺に優しく微笑みかけたことも!? 合唱のことは、ともかく、俺のことについては、どうでもいいことだってわかっていたさ。 だけど、俺はどうしても許せなかったんだ。 父親に教わりながらもあんな合唱をする彼女が。 俺の中で大きな転機だった初恋を侮辱されたような悔しさ。 理不尽だなんてこと、わかっているさ。 バカだってことももちろんだ。 だけど、俺はどうしてもその怒りを鎮めることができなかった。 「許せない」 口をついて出たつぶやきには、自分でも考えられないほど刺々しくて、どす黒さが渦巻いているようであった。 自分の話と全く関係のない俺の言葉に、加藤は更に戸惑っているようで、それからは口をつぐんでしまった。 俺は、なるべく感情を表に出さないように、体育座りをした膝の中に顔を埋め、眠ったふりをしながら、全ての部活紹介が終わるのを静かに待っていた。
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