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俺に、母親はいない。  父親との離婚が原因だ。 二人の離婚か決まった時、俺は中学1年という、思春期への入り口に差し掛かった微妙な年頃であり、全くショックがなかったわけではない。  しかし、これまでの生活の中で、何となく予感めいたものはあったから、嫌だとか、寂しいとかいった感情よりも、仕方ないな、という諦めの気持ちが大きかった。  変に大人びてただけかもしれない。  そんなかわいくないところも、母親に置いていかれた原因の1つだったのかな。  まあ、後悔してもしょうがない。大体、俺がどんなに泣こうと喚こうと、二人の離婚は翻ることはなかったし、俺が父親に引き取られることもすでに決まっていたのだから。 俺たち一家は、父親の実家で祖母と同居しており、共働きの両親に代わり、家事全般は祖母が受け持っていた。だから、母親がいなくなっても、俺の生活に大きな変化はなかった。 仲のいい友達には、そのことを教えていたが、興味本位に騒ぐ奴はいなかった。 もちろん、人を選んで伝えたこともあるが、うちに何度も遊びに来たことのある友達も、母親に会ったことはなかったから、例えば、 「えっ、あのおばさんが?」 みたいなショックがなかったことも大きいだろう。 母親が家にいなかった、なんて言うと、まるで遊びふけっていた母親が、恋人でも作って家を出ていったんじゃないか、なんて邪推をされかねないが、それは絶対に違う。 母親は、社会的地位のある職業についていて、仕事が多忙を極めていたのだ。
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