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「でね、あなたにお願いしたいことが2つあるの。まず1つは、合唱部への入部ね。これは、この間も話したけど、どう?考えてもらえたかな」 「いや、まだ…」 俺は、怒られている子供のように小さな声で曖昧に答えた。 「笠井、やろうぜ、合唱部。俺は、入ることにきめたよ」 隣で、加藤が言った。 加藤が、音楽に興味があるようなことは言っていなかったので、俺は、驚き、思わず、 「えっ?」 と声をあげてしまった。。 「まあ、森田先生と知り合いの先輩からの熱心な勧誘に折れたっていうのが正直なところなんだけどな。でも、今までやったことないことやるのも何か面白いかなと思って。嫌になったら、辞めればいいしさあ」 加藤の言葉に、 「それは許さないわよ」 と、森田先生が笑って見せる。 「これは笠井くん自身の問題だから、考えてもらうとして、もう1つ、お願いしたいことは、ね」 森田先生は、姿勢を正し、改まった感じで切り出した。 「あなたのお父さん、笠井先生に合唱部の指導をお願いしたいの」 森田先生は、真剣な表情で俺に訴えかけた。 「私の力不足が悪いのは承知している。でも、本格的に指揮の勉強をしたこともないし、授業の準備や会議、私も時間がなくて、部活に割く時間が足りないのよ。休日に勉強したり、CDを聞いたり、努力はしてるつもりなんだけど…」 森田先生に続き、副部長が話し始めた。 「実は俺も笠井先生の合唱団に入っていたんだよ。解散する最後の団員なんだ。君のことも見たことあるよ」
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