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母親は、中学教師であった。
ちなみに、父親も中学教師であった。
どちらも、「あった」と過去形で言った理由は、上昇志向の強い母親は、教頭へと昇進、父親は、色々なゴタゴタがあり、退職してしまったからだ。
僕は、二人の離婚の原因をきちんと聞いていないが、このことが大きなきっかけになったことは間違いないと踏んでいる。
幼いとは言え、同じ屋根の下に住んでいれば、感じるものはある。
母親が、俺を引き取らなかった理由は色々あるだろう。
祖母と父親からの強い反対、自分の仕事の多忙さできちんとした教育ができないと考えた、単純に俺が邪魔だった…。
考えればきりがないが、俺は今の祖母と父親との3人での生活に不満はないから、それでいいと思っている。
中学校の音楽教師をしていた父親は、現在自宅を改築して、ピアノや声楽などを教える教室を開いて生計をたてている。
これも儲かっているのかいないのか、俺は知らない。けど、まあ、とりあえず高校に進学もでき、食うに困るようなことはないのだから、それでいい。
学校をやめてからの父親は、寂しそうではあったが、同時に自由を手に入れ、いきいきしているようにも見えたから。そして、父親は俺に音楽を教えた。
小さい頃は、他のピアノ塾に通わされていたけど、教室をやるようになってからは、自分で教えた。
時には、マンツーマンで、また別の時には、他のレッスン生と共に。
いろんな形で、俺に音楽をやらせた。それが、生き甲斐のようにも見えた。
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