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父親が、合唱部の指導をすることが決まると、俺の周囲は急に慌ただしくなった。 昼休みになると、俺と加藤の所に、田中先輩が来る。 「笠井先生、来てくれるんだって?笠井も入るんだろ?」 俺は、しぶしぶ頷いた。 「大丈夫っすよ。俺が首ねっこ掴んででも連れて行きますから」 ふざけた口調の加藤に対し、田中先輩は真面目な顔で話を始めた。 「お前が入ってくれるのは、部としては大歓迎なんだけど、本郷がどう感じるかってとこが気になるんだ。お前、本郷に食ってかかったんだろ?」 言われて、俺は、黙って首を縦に振った。 「アイツ、プライド高いし、お前、入部してもあんまり関わらない方がいいな」 「でも、部長さんて、すげー可愛いですよね」 加藤が言った。 まさか、コイツ、彼女に惚れたのか? 「そんな怖い目で見るなよ。お前は苦手かもしれないけどさ、一般論を言ったまでだから」 加藤が笑って言った。 「とにかく、本郷のフォローは俺の方でするから、心配するな。他にも先生の息子ってことで、色々嫌な思いをすることもあるかもしれないけど、それも俺に言って。何とかするよ」 俺は、有り難く思い、頭を下げた。 加藤が、彼女を可愛いと言ったことだけが、胸にひっかかっていたけれど。
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