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俺は、名指しで怒られる度に、当の本人である彼女のことを盗み見た。 他の部員たちも、心配してか、興味本意の好奇的なものかはわからないが、チラチラ彼女を気にしている。 それでも、彼女は堂々としていた。 まるで何でもないというふうに前を向き、父親の目をしっかりと見ている。 綺麗だ、と俺は思った。 たくさんの部員がいる中で、彼女だけが光って見えた。 力のある瞳で、歌い続ける彼女に、俺は、再びひかれたんだ。 一度は諦めた人。 そして、また諦めなくてはならない人。 彼女が俺のことが嫌いなのはわかっているけど、時々、こんなふうに遠くから見ることを許して欲しい。 また、俺の片想いが始まった。 両思いになることは決してない、不毛な片想いが…。
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