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「無理なことはないだろ。お父がやってる通りにやればいいんだから。そういうことで、俊太にやらせるけど、森田さん、いいかな?」
今まで、ずっと部長がやってきたことを、先生の息子とは言え、生意気な一年坊主の俺がやることに、他の上級生は、面白くないんじゃないか、目をつけられるのではないか、と言うことに、俺は、恐怖を抱いた。
そして、当の彼女がどう思うのか。
俺が彼女に嫌われていることはわかっている。
だけど、今以上に彼女を傷付けてしまうとしたら。
自分への嫌悪感を増大させてしまうとしたら…。
やっぱ、へこむよなー。
「わかりました。2、3年生から不満はでるかもしれませんが、こちらの方でよく説明しますので、月曜から、笠井くん、宜しくね」
森田先生に頭を下げられ、俺は頷くしかない。
「大丈夫だよ、笠井。俺もフォローするし。思うようにやってくれれば」
田中先輩にも言われ、俺は、いよいよ断ることができなくなった。
夜の部のレッスン生が来るまでに帰らねばならないと、父親は急いで車を走らせる。
先生と田中さんが、見えなくなるまで見送ってくれていた。
帰りの道中の助手席で、俺は、父親に文句を言いまくる。
1年のくせに、そんなことをやるのは嫌だ。
先輩に目をつけられ、呼び出されて殴られでもしたらどうするんだ。
だいたい、俺は、合唱の発声練習なんて前に出てやったことなんかないんだ。
等々…。
しかし、父親は涼しい顔で答える。
「あの部に、他にやる奴がいるか?基礎的なこともろくに身についていないんだ。呼び出しなんかされたら、すぐに森田さんに言えばいい。何、内申に響くとか言えばどうにでもなる。それに、大怪我をするほどじゃなければ、先輩から制裁を受けるのも経験の一つだろ。やり方なんか帰ったら教えてやるから、その通りにすればいい」
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