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俺が彼女に会ったのは、中学2年の時、父親の音楽教室でだ。
学校の女子からの告白は、面倒だと断っていたのに、彼女のような人が現れるとは思ってもいなかった。
彼女は、俺より2つ上の高校1年生。
漆黒の長い髪、白い肌、可愛らしい顔立ち。
そして、何より、音楽に対する熱い思い。
たった2つだけど、彼女はすごく大人に見えて、俺は憧れの気持ちを抱き始めた。
彼女の名前は、本郷理穂。
音楽大学への進学を目指し、父親の所に声楽を習いに来ていた。
その声は透き通るようなソプラノで、レッスンを続けるごとに、どんどん上達していく。
そんな彼女と練習する時、父親は他の生徒以上に熱心に接しているのがわかった。
彼女は声楽だけのレッスンであったが、父親は音楽全般に対する様々なことを教えていた。
ピアノや他の楽器のこと、歴史や作曲に関すること。
その中で、父親が口を酸っぱくして言っていたのが、合唱のことだ。
父親は、中学教師をやっていた時、合唱に力を入れていた。生徒を率いて、全国大会に出場したのも一度や二度のことではない。
そんなこともあり、自分の思い入れの強い生徒である彼女が、学校の合唱部に入ったのが嬉しかったようだ。
「あなたの歌いかたは、ソロの声楽としては、いいけど、合唱で、しかも30人にも満たないところではちょっとまずいかもしれないね。合唱というのは、ハーモニーだからね。みんなの声をよく聞いて、合わせないといけないよ」
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