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いつもの朝だった。
カラスのキィオは、いつものように燃えないゴミ置き場の防鳥ネットをかいくぐり、ゴミ袋を嘴で破き・・・カアァっ!!
「わっ!鼻が!!」
隣の同僚カラスにカアッ「うるさい!」と怒鳴られた。
「だって・・・!」
「だっても何もあるか!早く袋を開けろ!こっちは腹が減ってイライラしてんだよ!」
周りのカラス達もなかなかゴミ袋を破かないジョイをかぁかぁと騒いでせがんだ。
その袋にはカラスの嫌いな匂いが染み込んでいた。カラス除けゴミ袋だったのだ。
ぷいっとキィオが振り向きざまに「だが断る」とおどけて言った。
あれ?みんな怒ってんのかな?どっしょーかなー突っつくと臭いしな~!突っついて破かないと食べられないしな~!
更に悪いことに、カラスのゴミ被害対策に駆除しに来た、保健所の人間が迫っていたのだ・・・!カラス達はそれには気づかなかった・・・!
「ねぇ~、代わりに破ってくれない?駄目?頼むよ~!この通りだから!ねえったらねぇ~!」
「拙者嘴くたびれたからさあ~!代わってよ!」
キィオはこんな臭い袋から逃げ出したかった。でも・・・この袋を破かないと周囲の怒りが収まらない。どうしょっかな~!やめよっかな~!やらなきゃいけないしな~!
周りのカラスのゴミ袋をなかなか破かずにモタモタするキィオへの怒りのボルテージは上がっていく。
もういいや。ええいっ!キィオは匂いを嗅がないように息をせず、嘴を袋に突き刺した瞬間・・・
「ぎゃー!ぎゃー!ぎゃー!ぎゃー!」
カラス駆除の保健所員がゴミ袋の山に群がっているカラス達を一羽一羽網にさらったり、摘み出しては鉄の檻に入れだした。
やっっと臭いカラス除け対策ゴミ袋をこじ開けた、カラスのキィオは得意気になってえっへん!と胸をはっていた。そして周りが歓声をあげていると思い込んでいた。
歓声もとい断末魔が収まった。
「もういいぞ~!たべてもいいぞ~!・・・あれ?誰もいない・・・?!待ちわびて、違う餌場に行ったのかな?」
周りのカラス達が帰ってくるまで待っていた。
・・・待っても待っても来ない・・・どうしたのかな・・・
そこに肩で息をして、この世とは分からない凄い怒りと憎しみの顔で睨みつけている一羽のカラスがいた。何とか逃げ延びたリーダーカラスだ。
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