か弱いハートが折れちゃいそう

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か弱いハートが折れちゃいそう

 長谷川は次の日から、人が変わったような変貌をする。消極的であった彼女はどこに行ったのか、クラスメイトの集団の中心に自ら入り、コスメ、ファッション、映画、アイドル、果ては恋の話まで……。今までのイメージを覆すような明るさと話題量に、はじめはぽかんとしていたクラスメイトも、話せる奴だとわかると、次第に会話のが水の流れのようにスムーズにこと運び、いつしか長谷川はこのクラスの中心に位置する人間になっていた。行事関係の面倒くさい役も進んで引き受け、友達の頼み、端から見ればただパシリにしてるのではないかというようなことでさえ、嫌な顔ひとつせずに呑みこんだ。そのうち周りの男子が彼女の手助けをし始め、古臭い言い方だが、クラスのマドンナと言った存在だろうか。少なからず女子からの嫉妬もあるようだが、腰の低さもあって表立って責められることもなかった。俺に対する反応も今までと何一つ変わらなかった。その一連のことが、俺への当て付けというか、憤怒の衝動から来るなにかのようでたまらなく恐ろしい感情を憶えた。  長谷川がクラスの中で活発になるのに反比例して、俺は卒業式まで日に日に痩せこけていった。
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