一話

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 わたしがこれから通う公立の桜舞高校は、自宅から電車で1時間ぐらいかかる。  中学からの知り合いは一人もいない。  仕方がなかった。過去のイメージを消すには。  少しさびしい気もするが。  気合いを入れるように声に出した。 「真面目に頑張るぞ!」  そう言って、歩き出した。  発車ギリギリに電車に乗り込んで、何気なく辺りを見渡す。  車内にはサラリーマン風の人に、iPodで音楽を聴いてる大学生風の人や、私と同じ高校生ぐらいの人が乗っていた。  わたしは入り口付近のつり革に掴まっている。  電車にゆられてると眠気が誘う。  早起きは苦手だ‥ 「AKB48てよ、じじいと付き合ってるらしいぜ!」  耳障りな声が聞こえてきた。  声の質からして同い年か下ぐらいかな? (わたしは、疑惑否定しただろ!)  と心の中でツッコみをいれながら、睡魔に身をゆだねようとしていたら、 「あん?名前?あれだ、あれ」  その声がやけに耳にまとわりつき、気になって眠れない。 「思い出した、玉子じゃね?」  玉子てなんだよ!  こいつ、バカだ。  会話が気になり、眠れない。  やっと睡魔に負けようとしてる時に降りる駅に到着した事に気付き、慌ててホームに飛び降りた。
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