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【救エルノハ貴女ダケ】
─ヴルルルルッ
「せ、先輩っ!」
「すまん、恵子!
課長に適当な理由を付けておいてくれ!」
私は急ぎ車を発進させ、現場へと向かう。
場所はとある病院だ。
1983年4月6日にその病院は
数々の医療ミスにマスコミと民間の批判。
そして裁判で責められ、
止む得なく病院は閉鎖した場所。
だが現在も封鎖されてはいるものの、
若者の間では肝試しや、
医療ミスで死んだ幽霊が出る等と、
幽霊スポットとして、
度々出入りされている場所でもある。
…前まではそんなのは
どうでもいい話ではあった。
そう、さっきまでは…な。
「………」
助手席に置かれている一枚の紙を見る。
おっかっぱのような黒髪で、
華奢な暗い女の子。
……間違いない、
゙あの人゙がいっていた女だ。
だが、おかしい点がある。
……あの人の落書きでは見た目からして
中学か高校くらいの外見だ。
例え中学だろうが高校だろうが、
数年も経てば大人の女性になっている筈。
…なのに似顔絵では幼い少女の姿…。
背は中学生くらいだ。
大人だとしても童顔過ぎるし、
あまりにも背が低すぎる。
「成長をしないのか…?」
栄養不足な人間は背を
伸びるのが止まると言う。
だが、栄養失調するような女じゃない。
そんな馬鹿げた事で
死ぬ事や生き抜く事が困難な人間では
絶対に無い筈だからだ。
昔、浩一さんが死ぬ前に報告した情報。
明らかに知識のレベルが桁違い…。
十分、大人顔負けの能力を持っている。
それだけじゃなく、
残忍な殺傷能力も侮れない。
「……相手はまさに化け物か」
─キィッッ
廃墟の病院にたどり着き、
車から降りては、辺りを見回す。
住民からの情報では、
病院に入って行ったようだな…。
「…嫌な予感がするわね。
急ぐべきかしら…」
私は門を登り、
病院の庭に侵入。
再び周りを警戒する。
………………。
「やはりどこからか視線を感じるな…」
まるで罠にかかる前の
陽気なウサギのような感覚─
……いや、ならば今頃になって
私を罠にはめる理由や動機がわからない。
それに殺すならば
とっくの昔にさっさと殺しに来ている。
…と、なれば─
「あの女の視線じゃ無いのか…?」
…もしそうだったら、
病院の中に女以外の誰かが?
…まさか……ね…。
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