小屋

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シンデレラの王子が涙を浮かべる。 「ありがとう、二人とも……二人の方こそ、いい王子だ!」 「いやいや、そんなことありませんよ」 「謙遜することはない、いばら姫の王子!貴方はとても勇敢で、情に溢れている!」 「そうですよ!僕も見習いたいです!」 「白雪姫の王子だって、誠実で紳士的じゃありませんか」 「えっ、本当ですか?いばら姫の王子に言ってもらえるとは恐縮です」 「シンデレラの王子だって賢く、真っ直ぐで、王子の中の王子ですよ!」 シンデレラの王子はまた涙を浮かべる。 「……そう言ってもらえると――嬉しいです!ありがとう!」 そう言って、三人はしっかりと抱き合った。 その瞬間、ピシャンと大きな音が鳴る。 ――魔女のムチだ。 魔女はゆっくりと椅子から立ち上がる。 「さっきから人ん家でピーピー、ギャーギャーうるさいんだよ……しかも会話がいちいちウザい。鳥肌立つほどウザい」 全員がその場に凍りつく。 「とりあえずお前ら……」 魔女がムチを両手で握る。 「全員、正座」 「…………はい」 魔女に逆らおうなどと考える者は、誰もいなかった。
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