590人が本棚に入れています
本棚に追加
「この薄汚れたカエルがぁ!」
「ひぃ!ごめんなさい、魔女さん!」
魔女がムチを叩く音が大きく響き、カエルはますます体を縮こませる。
「居候のくせに何してやがんだぁ!」
「すみません!でも、あれはオイラじゃ――」
「いい訳するなぁ!」
「ギャーッ!!」
カエルの悲痛な叫びが、こだまする。
「あ、あの……」
「あぁん!?」
王子の声に魔女が振り返る。
魔女というより、女王様といった出で立ちだ。
ボンテージ服に、ニーハイブーツとムチ。黒髪のロングヘアーに、つり上がった目元。
壁にかかった杖だけが、彼女を魔女だと教えてくれる。
「あの、そんなにいじめなくても……」
王子は赤いベストを着たカエルを見た。
カエルの身長はもともと人間の半分ほどしかなく、魔女に怒鳴られたせいかますます小さくなっている。
そんなカエルが可哀想で仕方がないのだ。
「他人は黙ってろ!」
「ひっ!」
間髪入れずにムチが音を立てる。その隙に、カエルは奥の部屋に逃げようとした。
「おい、カエル」
カエルの背中がびくっと跳ねる。
魔女はにやりと笑った。
最初のコメントを投稿しよう!