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「どこに行くんだ?」
……カエルが今にも泣きそうな顔で、王子を見る。
カエルの目が語る「助けて」と。
王子も目で返した。「ごめん」と。
カエルが魔女に捕まった。
「いやだー!魔女さん!本当にオイラじゃないんだって!」
「うるさい!この家には私とお前しかいなくて、出掛けた間に、用意したシチューが一滴も鍋に残ってない!お前以外に誰が食べたって言うんだ!」
魔女が人差し指をカエルに突き刺して、怒鳴る。
王子は部屋の中を見渡した。
小屋の中は意外としっかりした造りになっている。
左隅の玄関を開けると、右側にキッチンと食器棚。
部屋の中央にはテーブルと、椅子が二脚向かい合わせに置いてある。
人が隠れられるとしたら、玄関奥にある扉の向こう側だけだろう。
そう考えていると、奥のドアが、音を立てて開いた。
「ふぁー。よく寝たー」
あくびをしながら、一人の少女が出てきた。
全員が少女を見て、少女も全員に見られていることに気づき、戸惑った顔をする。
「あの……どうしたんですか?」
「――どうしたんですか?、だぁ?」
魔女が少女を睨み付ける。
「お前か!鍋のシチューを全部食べたのは!」
「えっ?」
少女は少し考えてから口をつぐんだ――答えたも同然だ。
魔女はゆっくり少女に歩み寄る。
「勝手に人の家に上がりこんで、勝手に飯を食うとはどういう了見だ?」
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