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魔女の視線に少女は身を固くする。
「ご、ごめんなさい!ずっと森を歩いて、お腹が減って、つい……」
「つい?」
「ごめんなさい!ごめんなさい!殺さないで!」
なんと少女は、その場で土下座をした。
確かに魔女の迫力はすごかったが、そこまでしなくてもいいのではないだろうか。
これには魔女も面食らったようで、驚いた顔をした。
「ちょっと……私はそこまできつく言ったつもりはないよ。頭を上げな……悪かったよ。少し言い過ぎた」
魔女が少しばつが悪そうに言う。
少女はおずおずと顔を上げた。
「本当にごめんなさい。森の小屋にご飯が用意してあったから、私てっきり小人さんの家だと……」
「小人の家?」
少女ははっとした顔をして言い直す。
「いえ!何でもありません!」
「……あんた名前は?」
魔女が少女に問いかける。
少女は一瞬目を伏せて言った。
「私は『赤ずきん』です」
「赤ずきん?」
王子は少女を見た。
白い肌、赤い頬、黒い髪。とても美しい少女だが、赤ずきんの象徴である、ずきんをかぶっていなかった。
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