5人が本棚に入れています
本棚に追加
あわててうつむき、とけた氷で薄まったお酒に口をつけた。それから恐る恐る顔を上げると、二人は何事もなかったかのように楽しげに会話をしている。
私は再び目の前の喉仏に目を向ける。どうして男の人には喉仏なんてものがあるのだろうか。あのでっぱりの中には一体何が入っているのだろう……。
つらつらと考えていたら、友人の彼氏の不快な笑みも、友人の観察する目も、全部私の思い違いで、単に二人の仲が良いのを見せつけられているだけなんだという結論に達した。いつのまに喉仏から頭が離れてしまったのかはわからないけれど、とりあえずそう結論付いたのだから、まったくもって思い悩むことはない、と自分に言い聞かせる。
店を出るころには、友人はぐでんぐでんになっていて、友人の彼氏の支えなしでは歩けなくなっていた。二人はもつれ合うように歩き、とても自然に人気のない公園へ入っていく。私は二人に一声掛け、さっさと帰ろうとした。なのに酔っぱらいの友人は、ついてこいとわめいてきかない。友人の彼氏がなぜかニヤニヤと笑っている。
園内のベンチに友人が寝かされた。私はなにをするでもなく、その様子をぼんやりと眺める。
友人の彼氏は水でも買いにいこうかと言う。では私は彼女とここで待ってます、と返答した。なのに、いいからいいからと手首を捕まれ引っ張られる。なにがどういいのかわからない私は、あの酔っぱらいを一人にするわけにはいかないと抗議してみたけれど、無視された。
友人はベンチに横たわったまま、離れていく私と友人の彼氏をじっと見ている。やっぱり、あれは酔っぱらいの目ではない、と思った。
最初のコメントを投稿しよう!