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ベンチからそう遠くないけれど、薄暗く、またベンチからは死角になっている所まで引っ張られる。コンビニは公園の外だし、こっちの方に自動販売機があるわけでもなかった。
友人の彼氏はなぜか、私のことを凝視してくる。目が潤んでいるのはたぶんアルコールのせいだと思いたい。
どうしていいのかわからず、私も友人の彼氏の喉仏を凝視してみる。一体、この部分には何が入っているのだろうか……。
いきなり友人の彼氏が乱暴に肩をつかんできたので、それでは私も、と目の前にある喉仏に爪をくいこませてみた。存外簡単にくいこんでしまい、拍子抜けだ。そのままがぱりと開いてみると、中に丸いものが入っている。どきどきしながら取り出したそれは、小さいりんごだった。
ふいに友人の彼氏が、どさりと倒れてしまう。なにかまずいことでもしただろうかと、私は少しあせった。
手の中には小さなりんご。これを元通りに男の喉仏へ戻せば起き上がるのだろうか。でも、起き上がってしまうとそれはそれで困るような……。
呆然としている私から、友人はりんごを取り上げる。いつの間に隣にいたんだろう。倒れた彼氏には目もくれずりんごを口に放り込んだ。そして、友人はりんごをしゃりっ、しゃりっと音を立てて咀嚼する。
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