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木々がうっそうと茂る仄暗い森の中を、ぼろぼろのフードを纏った1人の少年が何かから逃げるように走っていた。
少年はまだ幼いようで背は低く、また、十分な食事が摂れていないのか、時折フードから見える手足は痩せ細っており、骨が浮き彫りになっている。
そんな少年の背後から、数十頭の野犬の群れが迫っていた。
「ハァ……ハァ……ハァ……。くそっ、まだ、追ってくる!!」
少年は迫る野犬の群れを一瞥し、歯を食い縛りながら必死に逃げる。
だが、所詮は子供の足。野犬の速さには到底及ぶはずもなく、瞬く間に周りを囲まれてしまう。
牙を剥き出し、唸り声を上げる野犬たち。
ジリジリと詰め寄りながら、飛び掛かる機会を伺っているその様子は、少年の心を恐怖で満たすには充分だった。
ゆっくりと、だが確実に近付いてくる死の恐怖。
少年の胸の奥は、悔しさと諦めの2色に塗り潰されていた。
数秒間の間が空いた後、一匹の野犬が少年に向かって飛び出した。
(ぼくはここでしぬの……? ……いやだ、まだしにたくないっ!しにたくないよ!!)
だが、最早少年に逃れる術はない。
迫り来る野犬たちを前に、少年はぎゅっと目を瞑り、訪れる死の瞬間を待った。
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