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CMが終わってバラエティー番組の再放送が始まっても、あたしは動けなかった。
ドキドキして。
自分の目が信じられなくて。
でも、あの炭酸飲料は見覚えがある。
水を飲むように炭酸をグビグビ飲んだ彼。
あのときと同じ。
缶がペットボトルになっただけ。
あんなに爽やかには飲んでいなかったけれど、でもあの飲み方は同じ。
中身が水みたいに。
あのグリーンアイズだって、そうそういない。
外国人だってブルーが定番。
あんな珍しい目に飴色の髪をした男が、この狭い日本にどれだけいる?
「びっくりした。マジに知らないの?」
あたしがハーフかと尋ねたとき、彼はそう言っていた。
初めて会った居酒屋では、サングラス。
二度目に会った夜は、黒のカラーコンタクト。
思えば意図的に緑を隠していた。
あたしよりも数倍きれいな肌。
どこか絵になるしぐさ。
そして、どこにいても目立ちまくる不思議なオーラ。
振り返るたくさんの視線。
当て嵌まることが多過ぎる。
やっぱり、さっきのひとは惟鷹なの?
あなたは有名人なの?
結局一睡もできずに朝を迎えた。
点けっ放しのテレビでは、あれから数回同じCMが流れた。
そのうちに、あたしの疑問は確信へと変わっていった。
泣きたくなるくらい好きな彼を、あたしが見間違えるはずなどないのだから。
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