海になる

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白っぽい風景が永遠と続いているかのように見えた。遠くのほうで陽炎がゆらゆら揺れている。今日は日差しが強い。体中がドロドロに溶けたアイスクリームみたいだった。頬や首筋や背中、あらゆる体の箇所から汗がふき出す。夏の強い日差しの中に浮かび上がる風景は、色彩が鮮やかに見え、うつくしい。夏の濃いにおいがする。 腕時計に目をやると、針は10時をさしていた。学校ではまだ二限が始まったばかりのはずだ。行き場のないわたしは、自分をかくまってくれるような場所を求めて歩きつづける。ファミレスやコンビニじゃだめだ。公園という気分でもない。水のある場所が良い。ひとりになりたかった。ひとりで、じっとしていたかった。自分と波長の合う場所で。海に面した場所が好きなのは、きっと海辺で育ったからだろう。波の音を聞いているだけで心が落ち着く。わたしは自分が海沿いに歩いていたことに気づき、そのまま防波堤まで歩くことにした。
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