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「おそらく、祐くんの影響でそうなったんだろうけど」
「ん~、少し違うかな?」
「え、違うの?」
「うん。祐司が今の道に走り出した時、あたし全然構ってくれなくて、『せめて部屋にいさせて!』って言ったから渋々入れてくれたの」
「うん、つくづく祐くんはゆーちゃんに甘いね」
「それで、その時がちょうど祐司が新しいエロゲをインストールしててね、祐司が異常にテンション上がってた」
あの時は子供だったな~、と続け、物思いにふけるように当時の事を思い出す。
パソコンの画面に風景と、下に枠で囲まれた文章、中心に女の子が映し出されていた。その時の作品は桜の枯れない島が舞台だったか。“表の世界”しか知らなかった由美にとっては衝撃的だった。
「あたしは祐司に振り向いてもらう為にエロゲを研究しようと思って。祐司が出かけてる時にこっそり持ち出してやり始めたの。あたしも自分のパソコン持ってたしね。最初はフラグがどうとかディスクレス化がどうとかで頭がパーンしそうだったけど」
「私はその方面は疎いからね~」
「最初は攻略サイト見ながらやったよ。初めて賢者タイムに入った時は思わず声上げちゃったし」
「まぁ…そりゃあね…」
「今じゃ時々自慰する」
「……」
「そんなこんなでやってくうちに自分で好きになっちゃって。今じゃ祐司の話についていけるよ」
これが、祐司の話についていける唯一の女子生徒、由美のルーツ。今ではさらにエスカレートして、祐司の部屋に勝手に入り込んでラノベやら同人誌やらを勝手に読んだりして現在の由美が完成されたのだ。
これだけ言い切った由美は妙に輝いて見える。
「──何だかエロゲがどうとか話が聞こえてきたんだが」
聴き慣れた声。…というより世界が一番聴きたいしずっと聴いていたい声が教室の前方から聞こえてきた。その方向から、今一番会いたかった祐司本人がキラキラと輝いて(由美によってダルそうな表情から少女漫画のような表情に勝手に変換され由美の視界に映り込んで)由美の元へ歩いてくる。
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