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放課後。
「ハァ~…」
長い溜め息をついた祐司は正門のところで由美を待っている。本当は一人で帰りたいのだが、いかんせん由美は何をやりかねるかわからない。一人よりは祐司がいた方が安全だ。
ちなみに、昼食は午前中の件があったせいか食堂で一人でうどんを食べた。
「ふぁ~…ねみ…」
小さく欠伸をして校舎の方を見る。帰宅部の生徒や進学クラスの生徒(基本部活をやらない)がぞろぞろ歩いてくる。グランドでは野球部が声を張り上げて、体育館ではバスケ部かバレー部のシューズが擦れる音が聞こえる事から相変わらずの部活の頑張り様は知れてくる。
すると、校舎の方から二人の女子生徒が小走りに近付いてくる。…由美とゆかなだ。
「…やって来たか」
「祐司~」
「お待たせ大将」
「ゆかなも一緒か…」
じゃあ俺は待ってる必要なかったんじゃないか? と祐司は思いつつもとりあえず二人と合流することにする。
「お前らはどっか行きたいとこあるか?」
「ん~…特には」
「あたしは祐司とならどこでも。できれば公園の林の中で野外プ──」
「ゆかな、散歩がてら遠回りして帰ろうぜ?」
「うん、わかった」
「祐司~、今は放置プレイはいらないよ~」
「今日の晩飯は何だろうかね~?」
「祐司ぃ~、冗談だから許して~っ」
「…わかったよ」
「ありがと祐司ぃ~」
「だからすぐ抱き着くなっ」
最初は由美の変態かつボケ発言に対して祐司はスルースキルを全開にしていたが、制服の袖を掴まれ涙目+上目遣いというコンボをまともに受けてしまえばさすがに祐司でも効果は絶大。
とりあえず、遠回りで帰る為、いつもとは反対の道を歩き出した。
「──あ、あの公園!」
とある住宅街を歩いていると、由美がとある公園を指差して走り出した。
──祐司はその公園をよく知っている。
最初は心を開かなかった由美を無理矢理連れ出して初めて遊んだ場所であり、初めてゆかなと出会って遊んだ場所でもある。
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