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「懐かしいな」
祐司は少し笑みを浮かべながら由美の後を追って公園の中に入る。ゆかなも祐司に同じようについていく。
「昔と変わらねぇな、ここは」
「そうだね」
「昔のまんな」
祐司、由美、ゆかなはそれぞれの方向を見ながら言う。南側に滑り台と砂場、北側に鉄棒に登リ棒にうんてい、西側にブランコと併設された大きなアスレチック、東側にジャングルジムと地面にバネの付いた動物型の乗り物。広さも一般的な公園と比べて多少広い程度のどこにでもあるような普通の公園だ。
しかし、祐司をはじめ三人は何故か特別な空間に感じられた。
単に懐かしいというのもあるが、“世界が日々変わり続ける事を拒絶している”とこの公園が語りかけているようだった。
「…あの滑り台」
ふと、祐司は滑り台を見る。
「由美が初めて登った時、高いのが怖くて降りられなくなったんだっけ。あれ以来、由美は高所恐怖症に…」
「あ、あれは走り回ってる祐司についていったらなっちゃったのっ」
「今じゃさすがに大丈夫だろ?」
「そりゃあ……東京タワーとかは無理だけど…」
ニヤニヤしながら問いかける祐司に苦笑を浮かべながら答える由美。内心してやったりと思った祐司に、今度はゆかなが仕掛ける。
「でも祐くんもやんちゃで危なっかしかったもんね」
「そうか?」
「あのアスレチック5、6メートルぐらいあるじゃん。その一番上から飛び降りて足捻挫して」
「あー…あったな、そんな事」
「『飛べないガキはただのガキだ!』とか叫びながらね。よく捻挫で済んだよ。それなのに祐くんは痛いの我慢してジッとしてて。それ見てゆーちゃんが『祐司が死んじゃった~~~っ』って大声で泣き叫ぶし…。祐くん達が一応呼んだ救急車で病院行った後、小学校の先生とか近所の大人がたくさん来て大変だったんだから」
「松葉づえで学校行ったらこっぴどく怒られたっけ」
同時の事を思い出して『馬鹿だな俺…』と同時から厨二発症し始めた自分に対して軽く自己嫌悪しながら改めて公園を見渡す。
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