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9月というまだ残暑が厳しいこんな時期にも関わらず公園の中を走り回る幼い子供達を見ながら祐司は思う。
(…羨ましいな小学生)
高校生にもなってこんな暑さの中走ろうなんてちっとも思わない。というより思いたくない。
「ちびっ子は元気で良いねぇ~」
「少し分けてほしいぐらいだね」
「よし、じゃあ私達もやろうっ」
ゆかなの謎の宣言に祐司は「は?」と、由美は「へ?」と、それぞれ間の抜けた反応をする。
「祐くんが鬼だ! それじゃ鬼ごっこ開始~っ」
そう言ってゆかなは祐司の肩をタッチして由美の手を引いて走り出した。その際、バッグを通りかかったベンチに投げ置いていく。
「…って、おま、何勝手に始めてんだよ!」
「日が暮れるまでに捕まんなかったら祐くん罰ゲームだよっ。だからゆーちゃん、逃げ切れたら祐くん好きにして良いから」
「ほんと!? じゃあ、あたし頑張るっ」
「だーっ! 由美まで手懐けやがって!」
祐司は先ほどゆかながバッグを置いていったベンチに自分のバッグを置いて、公園の中を走り回る妹と幼なじみを追いかけ始めた。公園にはまだ幼いちびっ子がいるがそんな事気にしない。
「待てってんだよ!」
祐司は登リ棒の方に逃げていくゆかなに狙いを定める。
「逃げてんのに何で待つんだよーっだ」
ケラケラと笑いながら逃げるゆかなに少し頭に来た祐司はスピードを上げ、ゆかなとの距離を詰める。
しかし、ゆかなは登リ棒の向こう側に回り込み、二人の間に壁を作る。
「そう簡単に捕まるわけにはいかんのだよ、戸松祐司くん」
「ほう。俺から逃げられるとでも思っているのか?」
「我が親友、ゆーちゃんの為ならば、私は逃げ延びてみせる。たとえそれが、ゆーちゃんの兄である祐くんが相手でも!」
「そうはさせるか! トラ◯ザム!」
祐司は叫んでゆかなを捕える為にスピードと俊敏さを上げる。ちなみに祐司の身体は赤くなっていないし、目で追えないほどの動きも出来ていない。単に気分だ。ゆかなをターゲットにロックオンし、登リ棒の間を縫うように走り回る。
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