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「祐司、起きて!」
可愛らしい少女の声でベッドからむくりと起き上がったのは、17歳の高校2年、戸松祐司。祐司は大きくあくびをすると自分を起こした“妹”に目を向ける。
「おはよっ、祐司っ」
「あぁ…由美…」
満面の笑みを浮かべて祐司に笑いかけるのは、戸松由美。祐司と同じ17歳の高校2年だが、家の立場上“兄妹”となっている。所謂“義妹”にあたる。
祐司は8月21日生まれ。由美は9月2日生まれ。僅か2週間ほどしか期間の差はないのだが、歴とした兄妹なのだ。
祐司は手元の携帯電話を手に取り時間を見る。ちなみに時刻は6:40と表示されている。
「…少し早くないか?」
「う~ん…。お父さん、仕事で早く出ちゃったし、お母さんは昨日久々に飲んできてまだ起きてないの…」
「朝飯ぐらいお前は楽に作れるだろ」
「うん」
「じゃあ──」
「一緒に作ろっ」
「は?」
由美の突然の発言に祐司は不意を突かれた表情になった。おいおいおいおいと思いつつも祐司は由美に理由を問う。
「何でまた…?」
「だって…ね?」
由美は少し間を溜めて物欲しそうな表情を隠しているつもりだが結局表情に出てしまっているような顔で祐司を見る。
「2人お揃いのエプロン付けてキッチンに立って、あたしは野菜を切って、祐司は味噌汁かき混ぜて…。まるで新婚夫婦みたいじゃん!」
「……」
キラキラと輝く表情の由美を見て祐司は軽く溜め息をつくと同時に頭を掻く。
(コイツのブラコンはどうにかならんのかねぇ…)
そう。由美は重度のブラコンなのだ。祐司に関する事なら人一倍行動力は上がるし人一倍感情的になる。祐司も由美を放っておけない性質(たち)である為、周りからは非常に仲が良いと思われている(友人談)。ただ、“厨二病”という点では2人共共通点である。
「ねぇ~祐司ぃ~」
「…わかったよ」
「やった! 祐司大好き!」
嬉しさ全開の由美はそれを表現するかの如く祐司に飛び付くように抱き着いた。祐司は戸惑いながらも僅かに笑みを浮かべて受け止めた。
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