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「…落ち着いたか?」
「…うん」
「…で、あの瓶の中は何だ?」
「媚薬」
ゴチン!
「…痛い」
思わず殴った。だが祐司は反省も後悔もしていない。
こっちとしてはそんな物飲まされたらたまったものじゃない。第一、祐司はエロゲやギャルゲ…所謂“恋愛シミュレーションゲーム”のユーザーだ。フラグの立て具合やキャラの好感度アップの技術はそれなりにある。それで現実-三次元-に欲情するはずがない。ましてや義理の妹相手に。
その“義理の妹”は涙目で見上げるように睨んでくる。
「…鬼畜祐司」
「鬼畜で構わねぇよ。とにかく、思ったより時間経ってるからさっさと作るぞ。お前はサラダ頼むな。俺は味噌汁と目玉焼き同時にやっちゃうから」
「ぶぅー」
「ほら、早くしろ」
(ほんとコイツは構ってやらないとすぐ拗ねやがる。兎かよ)
頬がブスッと膨れたままの由美は無言で既に洗ってある野菜類を切り始めた。呆れ気味に溜め息をついて祐司は朝食作りに取り掛かった。
──結局その日の朝食は互いに口を交わさずに時間が過ぎた。時々こういう事はある為、祐司は慌てる事はない。祐司は特に気にかける事なく最終的な身支度を終えて玄関に向かった。
周りの景色はごく一般的な住宅街。中途半端に補正されたアスファルトの道を約1mほど先を歩くのは、最愛の家族であり尊敬する兄であり、同時に想い人でもある祐司だ。
「……」
祐司は少し安めのMP3プレーヤーにつながれたイヤホンを耳に付けて音楽を聴いている。おそらく、アニソンかゲーソンかキャラソンか何かのゲームのBGMだろう。祐司の影響でそれなりにそちらの知識はある。
(祐司、怒っちゃったかな…)
今すぐあの背中に抱き着きたい衝動を押し殺して祐司の背中を見つめる。たまにこういう事があるから大丈夫だと思っていても不安が募る。
「──あっ、祐くんとゆーちゃんだ! おっはよう! ダブルY兄妹!」
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