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由美の不安を打ち消すかの如く異常なテンションで後ろから走ってきたのは、幼なじみである天斗芽ゆかな(アマドメユカナ)。黒髪ポニーテールが彼女のいつものスタイルである。ちなみにこの街で一番歴史のある神社で巫女をやっている。
「おう、おはよう」
「おはよう…」
「む! ゆーちゃん元気ないな!? まさか祐くんに犯されたか!?」
「するかっ!」
ゆかなに対しての祐司の態度はいつもと変わらない。天然なのか狙っているのかわからないゆかなのボケに祐司が適度なツッコミを入れている。
「あのさ、ゆかな」
「ん? 何かにゃー?」
「…ちょっと相談が……」
そう言うと由美はゆかなの袖を引っ張って歩くスピードを緩めさせる。スピードが変わらない祐司は先に歩いていき、10メートルほど差が開いた辺りで気付いたのか振り返る。
「どうした?」
「んー? 祐くん、女の子同士の秘密の会話に入り込もうなんてデリカシーないね」
「は?」
「そんな人だったとは思わなかったよー。これじゃゆーちゃんも呆れるわ」
「…悪かったよ」
バツの悪そうに謝った祐司は溜め息をついてスタスタと歩き始めた。相変わらずゆかなは祐司の扱いが上手い。
「…で、やっぱり祐くん絡みかな?」
「うん…」
「別に気にする事ないと思うよ」
「え…」
「たまにあるんでしょ、こういう事」
「うん」
「だったらいつも通りにすれば良いじゃんっ。多分、今回は祐くんが何もしてこないから妙に不安なんじゃない?」
「あ…」
ゆかなに言われて由美は思い出した。確かにこういう時はいつも祐司がいつもと変わらず接してくれた。『由美ー、ゲーセン行こうぜー』とか、『買い物頼まれてるから手伝ってくれるか?』とか。
「ま、思い立ったら即行動! ゆーちゃん、我慢しなくて良いんだぜぃ?」
「うんっ! ありがと、ゆかな!」
元気を取り戻した由美は軽快に走り出し、
「祐ぅ~司ぃ~っ!」
ドスッ
「グハッ!?」
思い切り抱き着いた。
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