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「祐司ぃ~」
「…っ痛ぇな! おい由美! お前少し加減しろ!」
「えへへ~」
「『えへへ~』じゃねぇよ!」
「えへへ~」
「だーっ! これじゃ無限ループじゃねぇかっ! 何だっ、甘え期絶賛全開中ですか!?」
やはり祐司と由美はこうでないといけない。この兄妹は、むしろ周りを幸せにしてしまうぐらいの雰囲気が普段からある。由美は切に願う。この時がいつまでも続くように、と…。
学校に到着したらさすがに周りの目を気にするのか、由美は祐司から離れた。
祐司達は『黒杉高校』という私立校に通っている。読み方が『くろすぎ』なのでネーミングに些か問題があるだろうが、近隣の高校と比べればそれなりに大きい。この学校は部活にも力を入れている為、部活中心の“クラブコース”と進学コースに分けられ、祐司達は進学コースに入っている。ちなみに昨年から中等部も設立された。
「あー朝から疲れる…」
家を出た直後の大人しさから一気にテンションが回復した由美に必要以上(必要なんて思っていないが)にスキンシップを受けてそれに対応するのに余計な体力を消費してしまった。由美はゆかなと同じ(2―2)クラスで一緒に行った(というよりゆかなが由美を引き摺っていった)。
「よう、朝からお疲れのようだな」
後ろから祐司の肩をポンと叩きながら声をかけてきたのは、川海太陽(カワミタイヨウ)。祐司の親友にあたる。容姿は、一言で言うと“美男子”。悪く言えば“女顔”。名前の通り太陽のような笑顔が特徴的。祐司よりも長い茶髪をどうにかすれば女顔なんてどうにかなるのにと祐司は思っている。
「また由美ちゃん?」
「わかってるなら聞くなよ」
「良いじゃないか。僕の妹になってほしいくらい可愛いし」
「お前のその発言にはさすがに引くな」
「ハハハ、何の事だい?」
そんなやり取りをしながら祐司と太陽は自分達の教室に向かう。祐司と太陽は2―1に在籍している。基本的にクラス全体が“濃い”。担任曰く、進学コースで一番“濃い”らしい(担任も含め)。
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