アスカ――。

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懐に携えたレイピアが印象的な一人の長身が喧騒の中を行く。 王国・市街地での事。 長身は奇怪な男だった。 時をり、群集の波の中ど立ち止まる。そして、何かを探しているかのように辺りを見渡して――残念そうに溜息を吐き出す。 何度行ったか解らぬ、その行為。ただ飽きを見せる事なく、何十……何百も繰り返し、繰り返す。 「何か探しているのですか?」 ふと振り返ると、一人の少女が立っていた。 「あの……アタシ手伝いますよ?」 しかし彼は無言で、彼女の素性を吟味するように睨み続ける。 「アタシ……人助けが生き甲斐なんですよ」 少女が言い訳をするように言う。照れ隠しのつもりか、頭を掻きながら。 「アスカ――。我、アスカという少女を探している」 彼は言った。 運命の歯車は狂い出した事を知るものは、この時はまだ、誰一人としていなかった――。 .
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