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──ジリリリリリリリ!
けたたましく鳴るベルによって、俺は混濁した世界からカンダタよろしく引き揚げられた。
はっきりとしない意識の中で、目覚まし時計のスイッチを切って黙らせる。寝惚けた状態でも、全く失敗しないでスイッチを切れたのだから、なかなかどうして慣れというのは侮れない。
「…………頭痛い」
今月最悪の目覚めだ(現在六月一日)。夢の内容を一切覚えていないのに、何故かその夢がとてつもなく悪夢だったとは覚えていて、そのおかげなのかカラダがダルい。負の三重連鎖。ゴールデンウィークにインフルエンザを発症したぐらいの辛さだ。そんな経験無いけど。
「何でこんな日に限って……」
親は両方揃って早朝出勤なんだろう。妹も朝練に行ってるだろうから、学校を休むにしても、一階まで降りて自分で電話しないといけない。
さっきの言葉は訂正しよう。三重連鎖じゃなく、どうやら四重連鎖らしい。
「取り敢えず、一階降りないとどうにもならないな」
重いカラダに鞭打って、ゆっくりと立ち上がる。と、
「────」
目眩がして、それと一緒に、何か小さな声が聞こえた。何を言っているかは分からなかったが、少なくとも、男の声じゃなかった。
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